ワーキングメモリーとは?低い原因と効果的なサポート・改善方法を紹介

忙しい毎日で、情報をしっかり覚えて処理するのは難しいですよね。でも、忘れっぽくなったり、情報が追いつかなくなったりすることってありますよね?今回はそんな悩みを抱える人におすすめのコラムです。

今回は学習や仕事において重要な役割を果たすワーキングメモリーに焦点を当ててみましょう。ワーキングメモリーは、短期記憶と作業記憶を統合し、情報を一時的に保持・処理する能力です。この能力が低下すると、学業や仕事のパフォーマンスに影響が出ることがあります。そこで、本記事ではワーキングメモリーの役割や仕組みから始め、具体的なトレーニング方法や生活習慣の改善策まで幅広く解説しています。

ワーキングメモリーとは

脳内メカニズム

ワーキングメモリーの役割

ワーキングメモリーは、短期記憶と作業記憶を統合し、情報を一時的に保持・処理する能力を指します。例えば、電話番号を覚えておいて、それをダイヤルする際に一時的に記憶し、使用します。この能力は、学習、問題解決、注意、計画などの認知プロセスに重要な役割を果たします。

ワーキングメモリーの仕組み

ワーキングメモリーは、前頭葉と頭頂葉に位置する脳の特定の部分によって制御されます。このメカニズムは、情報を一時的に保持し、必要に応じて活用することで、効果的な学習や作業を可能にします。情報の取得、保持、処理、操作、および取り出しのプロセスが含まれます。

ワーキングメモリーとは例えるならば、まるで脳の作業机のようなものです。中学生が数学の問題を解くとしましょう。この作業机にいくつかのメモ用紙を使っているイメージです。最初に問題を読んで理解したら、その内容を一時的にそのメモ用紙に書き留めます。そして、計算を始める前に、そのメモを見返して問題の内容を思い出し、必要な情報を使って計算を行います。ワーキングメモリは、このように問題を理解し、情報を一時的に保持し、それを使って解決策を考えるプロセスをサポートしているのです。

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ワーキングメモリが低いとどうなる?

ワーキングメモリーが低いことで起こる特徴

困っている学生

ワーキングメモリーが低いと、日常生活や学業、仕事に様々な影響が現れます。たとえば、数学の授業で新しい概念を理解するのが難しくなることがあります。数式を読んだり計算を行ったりする間に、情報がすぐに忘れられてしまい、問題を解くのが困難になることがあります。また、授業や会議で長時間の集中が難しくなり、教科書や発表内容を理解するのが遅れたり、途中で意識が飛んだりすることがあります。

さらに、タスクの完了や計画の実行にも支障が生じます。宿題やプロジェクトの進行が遅れ、期限に間に合わないことがあります。予定を立てても、その計画を実行するのが難しくなり、細かい作業や手順を思い出すことが困難になることがあります。

また、情報の処理速度が遅くなり、思考の迅速さや柔軟性が損なわれることもあります。新しいアイデアや問題解決の方法を考えるのが難しくなり、意思決定が遅れたり、リアクションが鈍くなることがあります。これらの特徴は、ワーキングメモリーが低い状態にあるとより顕著に現れる可能性があります。

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ワーキングメモリーが低い原因

睡眠不足の中学生

ワーキングメモリーの低下は、生活習慣によっても引き起こされる可能性があります。特にストレス、不適切な栄養、睡眠不足が挙げられます。

まず、ストレスはワーキングメモリーに悪影響を与えることがあります。長期間のストレスや過度の心配は、脳の機能を妨げ、情報処理能力を低下させる可能性があります。例えば、テストやプレゼンテーションなどの学校や仕事関連のストレスがある場合、ワーキングメモリーの機能が低下することがあります。

次に、不適切な栄養も問題です。栄養不足や不健康な食生活は、脳の正常な機能に必要な栄養素を供給しないため、ワーキングメモリーの低下につながる可能性があります。特に、栄養バランスの偏った食事や過剰な加工食品の摂取は、脳の機能を阻害することがあります。

また、睡眠不足も重要な要因です。十分な睡眠をとることは、脳が情報を処理し、メモリーを整理するために必要不可欠です。不規則な睡眠パターンや睡眠不足は、ワーキングメモリーの低下につながる可能性があります。特に学生や仕事に忙しい人々は、十分な睡眠を確保することが難しいことがありますが、健康な生活を維持するためには睡眠の重要性を理解し、睡眠時間を確保することが重要です。

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ワーキングメモリーと勉強・仕事への影響

授業が理解できない中学生

ワーキングメモリーが低い場合、勉強や仕事において効率的な情報処理が困難になるため、学習や業務の遂行に支障をきたすことがあります。特に、複雑なタスクや多くの情報を同時に処理する必要がある場合に影響が顕著に現れます。また、ワーキングメモリーの低下は、学業成績や仕事のパフォーマンスにも影響を与える可能性があります。

ワーキングメモリーが低いと、数学の問題解決においても影響が現れます。例えば、方程式を解く際に、問題の条件や計算過程を頭に保持しながら進める必要があります。しかし、ワーキングメモリが低い場合、途中で条件を忘れてしまったり、計算の途中で手が止まってしまったりすることがあります。たとえば、「xとyの値を代入して式を解け」という問題で、xやyの値を計算途中で忘れてしまうことが挙げられます。

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また、レポートやプレゼンテーションを作成する際にも、ワーキングメモリの低下が問題となります。たとえば、調査結果や参考文献から情報を収集し、それを論理的に整理して文章にまとめる必要があります。しかし、ワーキングメモリが低い場合、収集した情報を整理することが難しくなります。情報が散漫になり、レポートのまとまりや論理性が欠けてしまうことがあります。

宿題が理解できない中学生

さらに、授業での理解や集中にも影響が出ます。例えば、教師の説明を理解しながら同時にメモを取る必要がありますが、ワーキングメモリが低い場合、教師の説明内容を十分に理解できないことがあります。また、メモを取りながらも、既に説明された内容を忘れてしまうことがあります。その結果、授業内容を理解するのに時間がかかったり、集中力を維持するのが難しくなったりします。

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ワーキングメモリーと発達障害との関連性

ワーキングメモリーの低下は、発達障害と密接な関連がある場合があります。特に、注意欠如・多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム障害(ASD)などの神経発達症において、ワーキングメモリーの問題が顕著に現れることがあります。

ADHDの場合、ワーキングメモリーの低下が特徴的です。注意力が持続せず、情報を一時的に保持する能力が弱くなるため、タスクの遂行や計画の立案が難しくなります。例えば、宿題を始めたものの途中で気が散ってしまい、作業を続けるのが困難になることがあります。また、情報を順番に処理することが難しくなり、教室での授業やテストで成績が低下することもあります。

ASDの人々も、ワーキングメモリーの問題に苦しむことがあります。彼らは、情報の処理や記憶が特定の領域に限定される傾向があり、複数の情報を同時に扱うのが難しい場合があります。そのため、授業での説明を理解し、同時にメモを取ることが困難になることがあります。また、日常生活での計画や予定の実行にも支障が生じる可能性があります。

授業についていけない女子生徒

これらの発達障害とワーキングメモリーの関連性を理解することは、適切な支援や対策を行う上で重要です。特に、個々のニーズに合わせた学習や仕事の環境を整えることが、彼らの能力を最大限に引き出すために重要です。

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ワーキングメモリーの低下への対策方法

ワーキングメモリーの低下に対処する方法はいくつかあります。まずは、生活習慣の改善が重要です。十分な睡眠を確保し、バランスの取れた食事を摂ることで、脳の機能をサポートしましょう。また、ストレスを軽減するためにリラックスする時間を作り、適度な運動を行うことも効果的です。

さらに、ワーキングメモリーを鍛えるトレーニングを行うことが役立ちます。記憶力を向上させるための認知トレーニングや脳トレーニングゲームを取り入れることで、情報の処理速度や記憶力を向上させることができます。

ゲームなどで鍛える

● カードゲームやボードゲーム

トランプゲーム:トランプのカードを使って、数字や絵柄を覚えるゲームがあります。たとえば、同じ数字のペアを見つける「神経衰弱」というゲームや、数字や絵柄の順番を覚える「覚えろ!トランプ」などがあります。

ボードゲーム:ゲームボードやコマを使って、駒の移動や配置を覚えることができます。例えば、チェスや将棋では、相手の駒の位置を覚えながら自分の駒を動かすことで、ワーキングメモリーを鍛えることができます。

● 記憶ゲーム

買い物リストを覚える:スーパーマーケットに行く前に、買いたいもののリストを覚えておいて、買い物中にそのリストを思い出す練習をすることができます。
思い出話を振り返る:家族や友達と一緒に昔の思い出話をするとき、その話を覚えているか挑戦してみましょう。誰がどんな話をしたかを思い出すことで、ワーキングメモリーを鍛えることができます。

読書する学生

● 読書や文章作成

新しい本を読む:新しい本を読んで、その内容を理解し、要点をまとめる練習をすることが大切です。読んだ後に自分の言葉で内容を説明することで、ワーキングメモリーを鍛えることができます。
絵本を読んで物語を思い出す:絵本を読んだ後に、その物語の内容や登場人物を思い出してみましょう。物語の流れや登場人物の名前を覚えることで、ワーキングメモリーを刺激することができます。

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● メモリーゲームを作る

自分でカードを作る:紙に数字や単語を書いてカードを作り、それを使ってゲームをすることができます。たとえば、数字の順番を覚える「数字あてゲーム」や、単語のペアを見つける「言葉のペア探し」などがあります。自分でゲームを作ることで、創造力も鍛えることができます。

手帳やスケジュール帳の活用

また、タスク管理や計画能力を高めるために、手帳やスケジュール帳を活用し、日常の予定を整理する習慣を身につけることも重要です。

さらに、学習や仕事の際には、情報の整理や覚え書きを積極的に行いましょう。重要な情報やタスクをメモに残し、忘れることなく取り組むことができます。また、情報を可視化するためにマインドマップやフラッシュカードを活用することも効果的です。

環境を整える

整理された机

最後に、集中力を高めるための環境づくりも重要です。静かな場所で勉強や仕事を行い、気が散らないように注意を集中させましょう。また、作業を細かなステップに分けて進めることで、情報の処理を効率化することができます。

これらの対策を組み合わせることで、ワーキングメモリーの低下に対処し、学習や仕事のパフォーマンスを向上させることができます。

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ワーキングメモリーについてまとめ

ワーキングメモリーとは、脳の一時的な記憶と処理能力を指し、学習や問題解決、計画などの認知プロセスに欠かせない役割を果たします。ワーキングメモリーが低下すると、情報処理やタスク管理に支障が生じ、学業や仕事に影響が出る可能性があります。特に、発達障害と関連してワーキングメモリーの問題が顕著に現れることがあります。

ワーキングメモリーの低下に対処するためには、生活習慣の改善やトレーニングが重要です。十分な睡眠やバランスの取れた食事を心がけ、ストレスを軽減するためのリラックス方法を取り入れましょう。さらに、カードゲームやボードゲーム、記憶ゲームなどを通じてワーキングメモリーを鍛えることが有効です。また、タスク管理や計画能力を高めるために手帳やスケジュール帳を活用し、集中力を高める環境づくりも重要です。

これらの対策を組み合わせることで、ワーキングメモリーの低下に対処し、学習や仕事のパフォーマンスを向上させることができます。