【2024年8月更新】英語民間試験導入はなぜ消えた?大学入試改革の舞台裏

※2024年8月時点での情報を追記しました

2019年11月1日に萩生田光一文部科学相が大学入試共通テストの英語科目に関して導入予定であった英語の民間試験導入を見送るという発表を行いました。
ここではその原因と、英語の民間試験導入の概要を解説していきたいと思います。

そもそも「大学入試共通テスト」とは?

大学入試に臨む高校生

大学入試共通テストとは現在のセンター試験に変わる新しい大学入試の試験形態です。
在のセンター試験は2020年度までで廃止され、2021年度からこの大学入学共通テストが始まりました。 また2024年度からは2022年から始まる新学習指導要領の実施に加え、大学入学共通テストの本格実施がスタート予定です。

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なぜ大学入試共通テストに変わるの?

グローバル社会の早いスピードのイメージ

今回の大学入試共通テストは大学入試改革の一環として実施されるものになります。 文部科学省は「学力の三要素」を「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」としています。

グローバル化や多様化によって社会のあり方が目まぐるしく変化していく現代社会に対応する力を身に付けるために、大学入試もこれまでの「知識・技能」偏重の試験から「思考力・判断力・表現力」も強く求められるものに変化する必要があります。
その中で考案されたのが大学入試共通テストでした。

大学入試共通テストではそれまでのマーク方式から記述式の問題の導入も決定されるなど、従来の試験方式から大きく変わることが特徴で、一部の学生や識者の中には反発の声も上がっています。

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英語の民間試験導入とは

英語のイメージ

この変化の一つに英語の民間試験導入が挙げられます。これは原則として受験生が高校3年の4~12月に受けた2回までの民間資格・検定試験の成績が大学入試の英語科目の評価基準として導入されるという取り組みでした。

ただ、当初から導入の程度、どのように活用するかは各大学の裁量にゆだねられていたり、国公立大学では検定試験の結果の活用は極めて消極的になっているなどの問題点も指摘されていました。英語の民間試験導入は大学入試共通テストが本格実施される2024年度に再実施の方向で調整されていましたが、最終的に断念されました。

その理由と今までの歩みを下記に掲載します。

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追記:英語の民間試験導入についての今までのあゆみとこれから

英語科目を意識している女子高校生

2017年11月:国立大学協会が全国立大学の一般入試で英語民間試験の導入を決定しました。

2018年4月-5月:東京大学内で成績認定基準の不透明さに反発の声が上がり、入試監理委員会がワーキンググループが設置されました。民間試験の出願時提出を必須要件としない方針を答申しました。
2018年9月:東京大学総長と文部科学大臣の会談を経て、入試監理委員会が民間試験の利用可能性を判断しますが、必須要件とはしないことを決定しました。

2019年11月1日:萩生田光一文部科学大臣が2021年大学入試共通テストでの英語民間試験導入を見送り、2024年度からの利用を目指すと発表しました。

2021年7月30日:萩生田文部科学相が記述式問題とともに英語民間試験の導入を断念し、現行の試験方法の維持を決定しました。

2022年以降:文部科学省が2025年1月以降の試験での導入可否を検討しますが、有識者会議が公平性などに課題があるとして「実現は困難」との結論を出しました。
大学入試共通テストは、現行のセンター試験に代わる新しい試験形態として2021年度から開始されます。2024年度からは新学習指導要領の実施に合わせて本格実施が予定されています。

この改革は、グローバル化や多様化する社会に対応するため、「知識・技能」だけでなく「思考力・判断力・表現力」も重視する目的で行われました。しかし、英語民間試験の導入や記述式問題の実施には、地域間や経済的格差による不公平、採点の複雑さなどの課題が指摘され、最終的に断念されました。

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英語民間試験の導入について

大学入試の受験勉強をする生徒たち

大学入試改革の一環として計画された英語民間試験の導入は、公平性や実施方法をめぐる議論の末、断念されました。この過程で浮き彫りになったのは、学力評価の多様化と公平性の確保という相反する課題です。

グローバル化に対応した英語力評価の必要性は認識されつつも、受験機会の格差や採点の複雑さなど、実施上の問題が克服できませんでした。この経験は、教育の質の向上と機会均等のバランスを取ることの難しさを示していると言えるでしょう。