※2024年7月3日時点での情報を追記しました

2019年11月1日に萩生田光一文部科学相が大学入試共通テストの英語科目に関して導入予定であった英語の民間試験導入を見送るという発表を行いました。
ここではその原因と、英語の民間試験導入の概要を解説していきたいと思います。

そもそも「大学入試共通テスト」とは?

大学入試共通テストとは現在のセンター試験に変わる新しい大学入試の試験形態です。
在のセンター試験は2020年度までで廃止され、2021年度からこの大学入学共通テストが始まります。 また2024年度からは2022年から始まる新学習指導要領の実施に加え、大学入学共通テストの本格実施がスタート予定です。

なぜ大学入試共通テストに変わるの?

今回の大学入試共通テストは大学入試改革の一環として実施されるものになります。 文部科学省は「学力の三要素」を「知識・技能」、「思考力・判断力・表現力」、「主体性・多様性・協働性」としています。

グローバル化や多様化によって社会のあり方が目まぐるしく変化していく現代社会に対応する力を身に付けるために、大学入試もこれまでの「知識・技能」偏重の試験から「思考力・判断力・表現力」も強く求められるものに変化する必要があります。
その中で考案されたのが大学入試共通テストでした。

大学入試共通テストではそれまでのマーク方式から記述式の問題の導入も決定されるなど、従来の試験方式から大きく変わることが特徴で、一部の学生や識者の中には反発の声も上がっています。

英語の民間試験導入とは

この変化の一つに英語の民間試験導入が挙げられます。これは原則として受験生が高校3年の4~12月に受けた2回までの民間資格・検定試験の成績が大学入試の英語科目の評価基準として導入されるという取り組みでした。
ただ、当初から導入の程度、どのように活用するかは各大学の裁量にゆだねられていたり、国公立大学では検定試験の結果の活用は極めて消極的になっているなどの問題点も指摘されていました。

英語の民間試験導入見送りの原因

今回の英語の民間試験導入見送りの大きな原因としては 受験生の間で地域間や経済的格差によって不利益を被る可能性のあることが大きいことが上げられます。
今回延期となった英語の民間試験導入ですが、大学入試共通テストが本格実施される2024年度に再実施の方向で調整されるそうです。

追記:その後の英語の民間試験導入について

では、

2017年11月、国立大学協会(国大協)は全国立大学の一般入試で英語民間試験の導入を決定しました。しかし、2018年5月には東大内で成績認定基準の不透明さなどに反発の声が上がりました。これに対し、東大の入試監理委員会は2018年4月にワーキング・グループ(WG)を設置し、民間試験の出願時提出を必須要件としない方針を答申しました。

2018年9月、五神真総長と林芳正文部科学大臣(当時)の会談を経て、入試監理委員会は民間試験の利用可能性を判断しましたが、必須要件とはしませんでした。これにより、民間試験の導入についての議論が進展しましたが、試験の公正性と公平性の問題が未解決のままでした。

2019年11月1日、萩生田光一文部科学大臣は2021年大学入試共通テスト(2020年度実施)での英語民間試験の導入を見送り、2024年度からの利用を目指すと発表しました。「受験生が経済状況や居住地域にかかわらず、安心して受験できるようにするためには、さらなる時間が必要」と説明しました。この決定について、東大の本部入試課は正式な通知を待ってから対応を検討すると述べています。

2021年7月30日、萩生田文部科学相は記述式問題とともに英語民間試験の導入を断念し、現行の試験方法の維持を決定しました。これは入試改革の大きな挫折であり、「2大看板」の再頓挫となりました。文科省は今後、個別試験での記述式問題の積極的な取り入れを進める方針を示しています。

文科省はその後、2022年度から新たな学習指導要領で学ぶ高校生が受験する2025年1月以降の試験での導入の可否を検討してきました。しかし、有識者会議は公平性などに課題が残ることを指摘し、「実現は困難」との結論を出しています。

2025年1月以降の大学入学共通テストに関する萩生田光一文部科学相の声明によれば、2021年7月30日に記述式問題や英語民間試験の導入を断念することを正式に表明しました。この決定により、入試改革の主要な要素が再び立ち消えとなり、現行の試験方式が当面維持されることになります。文科省は今後、記述式問題などを積極的に取り入れる大学に対して財政支援を進める方針を打ち出しています。

英語民間試験と記述式問題は当初、2021年1月に実施される第1回共通テストから導入される予定でしたが、実際には2019年11月から12月にかけて見送られることとなりました。これは、英語民間試験が受験機会に格差を生じさせる可能性や、記述式問題の採点の複雑さが理由です。

 

この一連の経緯から、英語民間試験の導入には大きな課題が残されており、入試制度の改革における公平性の確保が継続的な議論と課題となっています。