読書感想文が書けない中学生へ スラスラ書けるようになる方法

冬休みや夏休みの宿題の中でも読書感想文は特に負担に感じてしまうもの。
筆者も学生の時は課題図書を読んだのはいいのですが、何を書けばいいのかわからず途方に暮れていました。

そこで今回は中学生のお子様向けに読書感想文がスラスラ書けるようになる方法をご紹介!

読書感想文がスラスラ書けるようになる方法

読書感想文を書く中学生

そもそも文章を書くのは難しいですよね。感じたことを文字にするのは容易なことではないですし、真っ白な原稿用紙を前にすると、なにから書いていけばいいかわからなくなってしまうお子様も多いと思います。

ですが、大切なのはその最初の一歩を踏み出すことです。書きたいことや伝えたいことを思い浮かべて、少しずつでも文章にしていくことで、段々と形になっていきます。そして、書き始めたら、それを振り返って修正したり、追加したりすることもできます。

また、書くときには心の中で流れる言葉をそのまま書き出すことも大切です。文章を通じて、自分の考えや感情を表現することは、自己表現の一つの形でもあります。挑戦的な作業かもしれませんが、それだけに充実感や達成感も得られるものです。

ここでは本の選び方から具体的な書き方、感想文例までまるっと紹介しています!

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本選びから読書感想文は始まっている

本選びをする女子中学生

筆者の場合は映画ですが、レビューや考察を書くときに「面白いかどうか」という視点で作品を選ぶことはほとんどないです。
作品を選ぶ基準は「感想が書きやすいかどうか」。 そういう意味では本選びからすでに読書感想文は始まっているのです。

本選びのポイント1.すでに自分の中に予備知識のあるジャンルの本

実際の書き方は後述しますが、すでに自分の中に知識のあるジャンルであれば本を読んでいても色々なことに気づきやすくなりますし、多様な感想を持つことができます。

例えば幕末が好きな人なら歴史のジャンルの本や同時代に活躍した偉人の本などであれば比較的感想文も書きやすいのではないでしょうか。

本選びのポイント2.自分とは違う意見の本

評論系の本が当てはまると思いますが、意外と自分とは違う意見の本を読むと読書感想文がはかどることがあります。

実際によくあることでもありますが、自分と同じ意見の本を読んでも「そうそう、その通り!」しか出てこない時があります。面白い映画もそうで「これ面白い!」で終わってしまうんですね。当然それでは感想文にはなりません。

しかし、自分と違う意見の本であれば「なぜ自分はその意見に共感できないのか」を理由づけて書きやすくなるのではないかと思います。

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実際の読書感想文の書き方

鉛筆で必死に読書感想文を書いている様子

ではここからは実際の読書感想文の書き方を実例を交えてご紹介していきたいと思います。

書き方1.ざっくりした感想を一言書く

まず素直に感想を一言書きましょう。

・こんなところが面白かった
・あんなところが考えさせられた などです。

以下、浦島太郎を例にします。

例)
「最後の展開に驚かされる作品でした。」

また、それすらも難しい人は本の作者を書きましょう。

「浦島太郎は○○によって書かれました。」
これくらいで大丈夫です。 とにかく「何を書けばいいのかわからない」という状態を無理やりにでも無くして「とりあえず何か書いておく」というのも読書感想文が苦手なお子さんにとっては大切になります。

また、感想文全体のテーマやゴールを最初に書いておくのも良い始め方だと思います。
評論文も最初にゴールが書かれていることが多いと思います。

例)
「浦島太郎の物語は何を伝えたいのかを考えてみました。」

といった感じでしょうか。

書き方2.内容(あらすじ)をカンタンに書く

次に内容(あらすじ)をカンタンに書いていきましょう。その後の文章が書きやすくなるという利点と、原稿用紙を埋めやすいという利点があります。 感想文を読む側の人にとっても「どういう内容の本についての感想なのか」がイメージしやすくなります。

例)
「浦島太郎を要約すると、とある村の漁師、浦島太郎がいじめられていたカメを助ける話です。 カメの礼を受けて浦島太郎は海底の竜宮城へ行くのですが、乙姫らの歓待を受けつい長い間そこで過ごしてしまいます。 時間に気づき帰郷しようとした浦島太郎は、乙姫から「開けてはならない」と念を押されつつも玉手箱を渡されます。 故郷についた浦島太郎は好奇心からとうとう玉手箱絵を開けてしまいます。 すると浦島は見る間に白髪の老人の姿になってしまいました。」

浦島太郎のイメージ

書き方3.話を広げる

②までは比較的書きやすかったかと思います。ここからが何を書けばいいのか頭を悩ませる所ですね。 いくつかの観点に切り分けていくことができます。
そこから話を広げていきましょう。

1. いつ頃書かれたものなのか(書かれた理由や時代背景)

例えば浦島太郎は『日本書紀』『万葉集』『丹後国風土記逸文』にはその原型が見られるそうです。 これらが成立したのはいずれも8世紀。
ではその時に浦島太郎の物語が出来上がる要因となるような出来事があったのかどうかなどです。

例えば「8世紀 浦島太郎」で検索してみてください。いくつかのページを見てみると、当時は浦島が老人ではなく「何か美しいものが空へ飛んでいった」という結末だということが示されています。
また別の書物によれば浦島が行ったのは竜宮城ではなくあの世なのだということも書いてあります。
浦島太郎の物語が出来上がる実際のきっかけはわからなかったのですが、今とは違う物語であったことがわかるかと思います。

昔の日本のイメージ

ちなみに8世紀であれば、聖武天皇が奈良の大仏を作ったころ。社会科の教科書にあると思いますが、奈良の大仏には当時、飢饉や天災などの苦難を仏様の力でなんとか収めたいという願いが込められています。

当時の浦島太郎にはそんな時代の中で、せめて空想の物語の中だけでも「永遠の幸せ」を得たいという願いが込められているのではないかと考えることもできます。

では現代に伝わるような物語には「いつ」「なぜ」変わっていったのでしょうか。

ここでは割愛しますが、その本が書かれた理由や時代背景などをきっかけにして、こういった方向に感想文を書き進めていく事もできるというヒントになればと思います。

2. 書かれた内容から「今の時代・自分自身のことと通じるもの」を見つける

例えば浦島太郎はカメを助けますが、あなたなら助けますか?
また、カメをいじめているというニュースはあまり聞きませんが、動物虐待のニュースは耳にすることもあります。 最近では多頭飼いで飼育崩壊した猫たちのニュースがありました。
本の一部分を切り取って、自分たちの身の周りの問題と照らし合わせてみてもいいでしょう。自分の考えを書き加えるのもいいと思います。

疑問を見つける小学生

3. 疑問を見つける

『浦島太郎』でいうと、大きな疑問はなぜ浦島は年老いた姿になったのか、ということですね。
いろんな説があると思いますが、ポンと浮かぶのは昔の人は不老不死への憧れがあったのではないか?と個人的には思います。
その証拠として、実際に秦の始皇帝が不老不死の方法を追い求めたのは有名ですね。 しかし、現実にはそんな夢のようなことはできない事もまた時代が進む中で理解されていったのではないでしょうか。

ちょっと参考に1~3を使って思い付いたままに読書感想文を書いてみましょう。

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読書感想文の例

例)
『浦島太郎』の物語は、日本の古典文学の中でも特に有名な作品のひとつです。

浦島太郎は、海辺でカメを助けたお礼に、海の中の宮殿に招かれます。そこで彼は美しい姫と出会い、彼女と結婚します。彼は宮殿で幸せな日々を送りますが、故郷や家族を思い出し、帰りたいという願望が芽生えます。姫は彼の帰還を許しますが、条件として海の宝物を持ち帰らないことを誓わせます。
浦島太郎は帰還し、故郷に戻りますが、そこに辿り着いたときには驚くべき光景が待っていました。彼の家族や友人はみな亡くなり、彼の故郷は大きく変わってしまっていました。さらに、彼自身も海の宝物に触れた影響で老人になってしまいました。

『浦島太郎』の物語は有名ですが、その始まりは古く、8世紀に成立した『日本書紀』や『万葉集』、そして『丹後国風土記逸文』に物語が見られます。

当時の物語は今とは違う結末がありました。

最初の物語では、浦島太郎が海の中で美しいものになり、空へ飛んでいくという幻想的な結末が描かれていました。しかし、室町時代に成立した『浦島太郎物語』や『海道物語』などの文献では、違った結末が語られます。そこでは、浦島太郎が海から帰還した後、家族や友人がすでに亡くなっており、自分も老人になっているという結末が描かれています。これは今わたしたちが知っている『浦島太郎』の結末とほぼ同じですね。
ではなぜ浦島太郎が現代のような形に変わっていったのか考えてみたいと思います。

なぜこんな結末ができたかというと、その時代の人たちが大事にしていたことが関係しています。室町時代の日本社会では、若者が冒険心や欲望によって家族や社会との絆を失うことが悪とされ、その結果として老いや孤独が待っているという教訓が強調されました。この教訓が、浦島太郎の物語にも反映され、結末が変化したのです。

では、現代の社会ではどうでしょうか?現代では、若者が新しいことに挑戦することや自己実現のために行動することが肯定的に受け止められる傾向があります。自分の欲求や夢を追求することが重要視され、個々の成長や発展が尊重される社会が広がっています。

では、今の時代はどうでしょうか?今の社会では、若者が新しいことに挑戦することや自分の欲求を追求することは、悪いことではありません。自分を成長させたり、新しい経験をするためには大切なことではないでしょうか。

しかし、『浦島太郎』で書かれていたように大切な人とのつながりを大事にすることも忘れてはいけないと思います。友達や家族との関係は、人生を豊かにする大切な要素です。だから、自分の夢や目標を追い求める一方で、大切な人とのつながりを大切にすることは今も昔も変わらずに大事だと感じました。

読書感想文に正解はない!

というわけで浦島太郎に関する読書感想文をざっくり書いてみました。これで1200文字弱。自分が思う事、経験した具体例なども交えて書いていけば、2000文字にすぐ達しそうに思えませんか?
もしかしたら浦島太郎の研究者などの専門の人からみたら考察に間違いのある部分があるかもしれません。でもあくまで感想文。素直に感じたこと・考えたことを書いていけばいいのです。

読書感想文に「こう書かねばならない」という正解はありません。

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それでも読書感想文が難しいと感じる人へ

一つのとっかかりが別のとっかかりへのヒントになる

個人的には感想文は「ロック・クライミング」のようなイメージだと思います。 一つのとっかかりが別のとっかかりへのヒントになり、それがどんどん連鎖して、出来上がっていく、そんな風にイメージしています。

読書感想文のコツ1.メモを書こう

そういう意味では、最初から文章にしようと考えずに、感じたこと、関係があるかもしれないキーワードなどをメモしていくのもオススメです。 実際、筆者自身も箇条書きにした、いくつかの文章を並べて順番を変更したり接続詞を変えたりして最終的に一つの文章にまとめていくというのをよくやっています。

読書感想文のコツ2.他の人の感想文を見てみよう

読書の感想文に限らず、映画のレビュー記事でも大丈夫です。他の人の感想文も見てみましょう。 他の人はその作品のどういう部分に着目しているのかを知ることで、読書感想文もぐっと書きやすくなるはずです。

読書感想文のコツ3.見直しはしましょう

自分の書いた文章が他の人にとっても読みやすいものになっているか、時々読み直してみましょう。いったん全部書いてから書き直すのは、手書きの場合大変だと思うので、書いている途中でも時折読み返してみるのが大切です。また、誤字や脱字がないかもチェックしておきたいですね。

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2000文字をどう埋めるか

真剣な表情の女子中学生

読書感想文とは言いますが、純粋な感想を2000文字書くのは大変なものです。
先にも述べましたが、自分の意見、考え、その本が書かれた背景などもぜひ書いてみましょう。自分のことであれば、比較的文章が出てきやすいと思います。

また、こうすることによって「自分の意見や考えを文章でわかりやすく伝える力」も育まれます。この力は高校受験だけでなく、大学入試(特に小論文を課される場合)、また社会人になっても強く求められる必須のスキルです。

もちろん、筆者の書いた例の感想文のように、ここまで難しく書かなくても大丈夫です。
ただ、こういう書き方、こういう着眼点もあるんだということをわかってもらえればと思います。